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坂の途中の家|角田光代

久しぶりの角田さんの長編。
子育て中の主婦が、幼児虐待死事件の補充裁判員に選ばれたところから始まる小説です。

坂の途中の家 (朝日文庫)

坂の途中の家 (朝日文庫)

  • 作者:角田光代
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: 文庫
 

角田さんの小説は好きなのですが、長編だと中盤くらいに「主人公の抱えるもどかしさ」が描かれることが多く。このもどかしさが何とももどかしい。「そんなこと気にするなよ」と苛立つような気持ちが出てくる一方で、「自分も同じような状態になるかも」と妙に共感するところもあったりして。
特に、角田さんが描く女性は主婦やパートの方が多く、自分と立場が違って共感できないところもあれば、自分も家庭に入ってたらきっとこうだったのかなと思うところも・・・ということで、中盤にはいつも悶々とさせられます。

今回も、最初は、裁判と主人公を取り巻く日常が淡々と描かれていて、「裁判員裁判がテーマか、面白そうだな」「表紙や帯から受ける印象ほど深刻そうではないな」と思って読み始めたのですが・・・。
次第に主人公が被告人と自分とを重ね合わせていきます。これが巧妙に描かれているので、途中でどちらの家庭の話をしているのか、よく分からなくなってくるくらい。そして、ついには「自分も同じ状態になるかもしれない」と。自分には子どももいないのにそう思えてくるから不思議なものです。

どうやら、この小説も映像化されているみたいですね。WOWOWの連続ドラマ。主人公を演じているのは柴咲コウさんのようで。私の好きな女優さんの一人でもあるので、ぜひ観てみたいなと思います。