え?50歳のおじさんが主人公なの!?
・・・と、この本を読み始めた人の多くは思ったのではないかと思います。それくらい意外でしたね。いつも「子」の立場から描かれることの多い瀬尾まいこさんの小説ですが、今回は「父」が主人公でした。
まぁ、「父」と言っても、籍も入れず、25年間養育費を払っていた、血だけつながった「父」ですね。そこに息子が突然転がり込んでくるところからストーリーは始まります。小説家で引きこもり気味の父に対し、社交的な息子・・・。
私もどちらかというと、主人公の気持ちはよく分かるんですよね。他人と接しない方が自分のペースで物事を進められるし、ストレスも少なくて済む。でも、そんな人と接していない生活が続いていると、「こういうときはどうしたらいいんだ」「あんなことするべきじゃなかった」みたいな、意外と社会生活で基本的なことが分からなくなったりして。
世捨て人的な生活に憧れることもありますが、完全に世を捨てて生きることなんてできないし(この主人公は小説家なので結構特殊)、そうするといざ人と接したときに困ったりしちゃうんですよね、分かる分かる・・・なんてことを考えながら、読んでいました。
一見、「家族」がテーマのようで、人と人とのつながりとか、現代生活や都会生活で忘れられがちなことに、スポットを当てているような作品だったと思います。